視覚障害の有る犬,猫,動物との共生【ビジョンロス(失明)動物協会】
ごあいさつ
協会の設立主旨
視覚障害動物と人間の豊かで幸福な暮らしを考えます
「ビジョンロス動物協会」はビジョンロス動物との共同生活を通して、動物と私たち人間の暮らしがより豊かでより幸福な生活になることを目指す会です。また、本協会に所属する会員は、視覚障害を持つ動物とどのように向き合い接したらよいかという問題を共有し、共に解決策を見つけ出すことに取り組みます。
代表からのご挨拶

視覚障害動物を飼っている方でどのようにその動物と接すれば良いかわからない方がいるのではないでしょうか。食事の与え方、排便・排尿のさせ方、散歩の仕方、遊び方などについて悩んだことはありませんか?
「ビジョンロス動物協会」はビジョンロス動物との共同生活を通して、動物と私たち人間との暮らしがより豊かでより幸福な生活になることを目指す会です。また、本協会に所属する会員は、視覚障害を持つ動物とどのように向き合い接したらよいかという問題を共有し、共に解決策を見つけ出すことに取り組みます。
「アイちゃん」ものがたり
獣医師で眼科を専門にやってきた仕事がら、多くのビジョンロスの動物を診断してきましたが、私自身、ビジョンロス犬の飼い主でもありました。30年ほど前になります。2ヶ月齢で両目を受傷したシーズーを引き取ることになりました。一方の目は眼球穿孔して眼球が突出し、また両目から多量の目やにを出していました。私の職場は獣医学生や研修獣医が多く出入りしていたので、まず、そこで交代でシーズーの世話をしていました。長期休暇に差し掛かり、職場に置いておくことができなくなったことをきっかけに、自宅へ連れて帰ることにしました。
家には幼い娘が二人いて、長女は幼稚園へ通い始めたばかりで、次女は足取りもまだたどたどしい二歳児で、親として不安は隠せませんでした。というのは、そのシーズーはやたらと噛み癖があり、匂いと噛む感覚で物を探る仕草があり、乳歯で噛む行為には噛まれた指先にトゲトゲしさを感じるものがありました。シーズーは始めのうちはケージ飼いにしておりましたが、すぐさま娘たちは一緒に遊びたいと、私にシーズーをケージから出すようにせがみました。ケージの扉を開けるとシーズーは勢いよく飛び出してきました。長女は突出した目の異常な外観を間近にしてびっくりして後ずさりしました。次女は、しかし、動じる様子はなく無造作に紅葉のような手をシーズーの顔の前に差し出しました。シーズーはクンクンと彼女の手に鼻を近づけてきてその指を噛もうとしました。私は娘の手を噛むのではないかとドキッとしました。私が一番恐れていたことです。しかし、シーズーは舐めるような噛み方で次女の手を確認すると、小さな舌でペロペロなめました。そして下の娘にすり寄せてしっぽをプルプルと振りました。少し離れてその様子を見ていた長女も、またシーズーに近づいていって恐る恐るなでることができるようになりました。シーズーは「アイちゃん」と名付けられ、こうして家族の一員になりました。
アイちゃんが一歳になった時、突出して失明していた眼の摘出の手術をしました。一方症状が軽かったもう片方の目は黒目に傷跡を残したもののアイコンタクトができるまでに視覚を回復しました。しかし、室内でのトイレは上手くいかず、屋外でしか排便排尿はできませんでした。そのため、アイちゃんの散歩は家族の日課でした。
目が突出していようと片目であろうと、子供たちはアイちゃんの外観の異常さに偏見を持たず、散歩に連れ出してくれました。アイちゃんは子供たちのアイドルでもあり、子供達のお絵かきのお得意のモチーフでお絵かき帳にはあかい舌を出したウィンクをした犬が度々登場しました。しかし散歩の時に見知らず人にアイちゃんに片目であることを指摘されると気まずい思いもしたようです。けれどそれだからといってアイちゃんを普通の犬と違うと特別視するようになるどころか、指摘した人に遺憾を示すぐらいでした。
10歳を過ぎて死ぬ12歳までに、アイちゃんは引きつけを起こして心肺停止を3回、経験しました。その都度、失禁状態になりました。そのうちの1回は、中学生になっていた長女が1人で家にいた時に起こりました。娘は裸足でアイちゃんを抱えて、私の職場である病院に駆け出し、その後、妻と合流し、病院にアイちゃんを連れてきました。到着時、娘は裸足で、また、アイちゃんは連れて来られる途中の振動によって、運良く意識が戻り自発行動が弱いながらも認められるようになっていました。しかし、肛門や陰部は汚れ失禁があったことを物語っていました。アイちゃんを初めてみた時に驚きを示していた長女も全盲のアイちゃんを気遣う行動ができるように成長していました。
全盲になったアイちゃんのお世話は、それまでとは比べものにならないほど、食事、散歩、トイレなどに注意が必要になりました。食事を無造作に与えていると、体重が減少したり、便が硬くなって排便困難になったりしました。またトイレでは、自分が排便・排尿したい場所を探すのに、時間がかかったり、思わぬ溝に落ちたりしました。遊びでは、嗅覚や聴覚をたよりに行動して遊んでいても、思わぬ溝や物体に足を絡めて身動きができなくなっていたこともありました。高齢になるにつれて嗅覚や聴覚は極度に衰え、不自然な方向に進行する仕草がたびたび、みられるようになりました。
犬は嗅覚、聴覚に優れている動物として知られています。しかし、全盲の犬のお世話は、それなりに、全盲の動物にとっても、またそのお世話をする人にとっても、苦労があると思います。ある日、アイちゃんに実験を行ってみました。それは、普段とは違う場所に食事を置いて、嗅覚を頼りに食事を探す仕草を観察するといったものでした。その動画が、本WEB掲載の「視覚障害犬(失明犬)がドッグフードを食べるまでの行動」です。<亡きアイちゃんです>
視覚障害を持つ動物に関する情報提供を行っていきます
本協会は、視覚障害動物を持つ方々への情報提供を目指しています。そのため、協会発起人は動物従事者ですが、身近にそのような動物を飼っている方々にも参加して頂きたいと思います。そのような方々の情報は、動物従事者では思いもつかない内容が無限にあると思います。本協会は、会員から収集した動画、文章、写真などのコンテンツを精査整理して公開します。
視覚障害を持つ動物にご苦労されている方々にとって、時に、慰めや同情はめげた心を癒してくれるきっかけに大切です。しかし、また一方、適切な情報入手はめげた心を克服するために重要です。めげた心を克服した対処情報も数多く公開し、より豊かで希望のある情報を探求していきたいと、私達は本協会を設立致しました。
御支援、御活用を賜りますよう宜しくお願い申し上げます。
印牧信行
2015年1月吉日